わざふく ~自閉症児の父になって~

知的障害ありの自閉症息子と共に生きる父親のブログ

【自閉症息子と行く家族旅行】温泉に行ったら、泣いてしまった件

みなさん、自閉症の子どもと家族旅行に行ったときに、一番大変なことって何ですか?

 

食事。大変ですよね。

 

トイレ。大変ですよね。

 

いろいろ大変ですが、私にとって一番しんどいのはコレ!

 

お風呂です。

 

 

 

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こんにちは、まりたくです。

 

今回のテーマは「自閉症息子と行く家族旅行」。その中でも「お風呂」にフォーカスをあてた記事です。

 

 

初めての方はコチラもどうぞ

mari-and-taku.hatenablog.com

 

 

目次

 

 

 

大浴場で大暴れしていた過去

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我が家の自閉症息子タクは、大浴場が大の苦手です。

 

行ったら最後。そりゃあもうすごい暴れっぷりです。

 

脱衣場の時点で大泣き、大暴れ。

 

洗い場に行ったらさらにヒートアップ。

 

そして、いざ温泉に入る頃には親のほうがギブアップ!

 

というわけで、まともに温泉に入ることはできません。

 

 

3歳で、大浴場をあきらめた

タクが1~2歳のころはまだ良かったです。

 

どんなに泣きわめこうと、周囲の大人たちの反応はおおむね優しいです。

 

「おうおう、坊主どうした?w 何か怖いのか?w はっはっはっw 子どもは元気でいいなあw」

 

そんな具合です。

 

しかしこれが3歳くらいになってくると、周囲の目も変わってきます。

 

身体も大きけりゃあ、声も大きいので、「ちっ、うるせーな。ちゃんとしつけとけよ、まったく。」という反応になってきます。

 

※実際そう言われたことはないですが、なんとなくそういう雰囲気に見えてしまうのです。

  

結果的に、タクが3歳くらいになった頃から私たちは、旅行先でタクを大浴場に連れていくことをあきらめました。部屋風呂に入れるようになったのです。

 

部屋風呂でも泣いてしまうことには変わりないのですが、周囲の目は気になりません。

 

たとえ温泉宿に泊まったとしても、私とタクは部屋風呂で済ませる、という旅行が続きました。

 

 

4歳、成長著しい息子を見て…

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猊鼻渓

さあそんな中、今年のお盆休み。岩手に、2泊3日の旅行に行ってきました。

 

初日の晩は、いつもどおり部屋風呂で済ませました。

 

このとき、何やら不安そうな表情を浮かべながらも、タクは泣きわめかずにお風呂(シャワーのみですが)に入れました。素晴らしい成長です。

 

今回の旅行において、お風呂以外の場面でも、タクの成長は随所に見られました。

 

「くつした脱いでね」と言ったら、脱げました。

 

「スリッパ履いて出かけるよ」と言ったら、スリッパを履けました。

 

そんなタクの成長を見て私は、こう思ったのです。

 

温泉、入れるかもしれない。

 

 

大浴場に挑戦すると決意

旅行2日目の晩。

 

私は決意を固めました。

 

今夜は部屋風呂には入れない。大浴場に行く。

 

泣きわめいてしまうかもしれない。

大暴れしてしまうかもしれない。

周りから変な目で見られてしまうかもしれない。

非難の声をあびせられてしまうかもしれない。

 

でも行こう、と。

何事もやってみないとわからない。

やってみないと成長しない。

たとえ失敗したとしても、タクにとっては良い経験になるだろう。

 

行こう。

 

 

大浴場へ行く前の事前予告

部屋で準備を済ませた後、私はタクの目をしっかり見ながらこう声をかけました。

 

「タク、いいか。今から、大きなお風呂に行くよ。大きなお風呂だ。

 大丈夫、何も怖くないから。お風呂に行くだけだから、大丈夫。

 大きなお風呂に行くだけだよ。」

 

ゆっくりと、何度も、丁寧に、「大きなお風呂に行く」と、説明しました。

 

部屋を出ました。

 

歩きながら、心の中で自分自身に対しても声をかけます。

 

「何があっても絶対に冷静でいること。

 あわてない。興奮しない。

 大丈夫、ただお風呂に入るだけ。

 楽しくお風呂に入るだけ。

 絶対に冷静でいること。」

 

 

脱衣場に到着

ここまで来るとタクは何かを察したようで、急に不安げな表情を浮かべ始めました。私はタクに声をかけます。

 

「大丈夫だよ。お風呂に入るだけだよ。ちょっと大きなお風呂に入るだけ。大丈夫だ。」

 

そして自分に対しても

「不安なところを見せてはいけない。冷静になれ。明るい雰囲気をだせ」

と言い聞かせます。

 

タクに「お風呂に入るから、お洋服をぬいでください」と声をかけました。

 

タクは、不安げな表情のまま服を脱ぎました。

 

「よーし、じょうずだ!いいね!いいね!」と、ほめます。

 

「さあ、行こう。大きなお風呂に行くよ。」

 

大浴場へ向かいました。

 

 

洗い場に到着

タクの表情はさらに不安さを増してきます。しかし、泣きはしませんでした。

 

「お風呂に入る前に身体を洗うよ。」

 

私はそう言って、シャワーからお湯を出しました。

 

その瞬間、タクの表情が一瞬明るくなりました。

 

シャワーが好きな子なんです。シャワーから出るお湯を身体にあてられると喜ぶタイプなんです。それを思い出しました。

 

シャワーのお湯をタクにあてると、タクはニコッと笑いました。

 

この瞬間、「これは、いける!」と思いました。

 

頭と身体を、順調に洗っていきます。タクは、泣きませんでした。

 

ついに洗い終えました。タクは、泣きませんでした。

 

 

そして温泉へ…

「大きなお風呂に入るよ。大丈夫だよ。」

 

そう声をかけながら、いざ温泉のほうへと向かいます。

 

ここへきてタクは再び不安そうな表情を浮かべていましたが、暴れることはありませんでした。

 

ぬるめの温泉をえらび、そっと中に入ります。それでもタクは、泣きませんでした。

 

「大丈夫だよ。お風呂に入るだけだよ。」

 

脚までは、普通に入れました。「いいね!いいね!大丈夫!大丈夫!」

 

そして、タクのことを抱きかかえて、肩までつからせました。

 

この瞬間。何年か振りに、私と息子は、一緒に温泉につかることができました。

 

ここへきてタクが明らかに嫌がる素振りを見せました。無理強いは危険だと思い、すぐに温泉からあげました。

 

2~3度トライしてみましたが、やはり肩までつかると嫌がります。

 

今日はここまでにしようと、温泉から出ました。

 

 

戦いを終えて…

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脱衣場までもどり、タクのことを盛大にほめてやります。

 

「よくがんばったね。よく泣かなかったね。温泉入れたね。いいね!いいね!」

 

身体を拭いて、パジャマを着させます。

 

いつも家で着ているパジャマを見たタクの表情は、明らかに落ち着きを取り戻していました。

  

部屋までの帰り道。

 

感慨にひたりながら、私はこう思いました。

 

「タクはよくがんばってくれた!すごい!

 息子と一緒に温泉入れたぞ!やったぞ!

 

 それにしても、タクは本当に成長したなあ。

 障害がありながらも、よくぞここまで成長してくれた。ほんとすごい。

 がんばったね。成長したね。」

 

泣けてきました。

 

なんかもう、感動してしまいました。

 

感極まってしまいました。

 

奇声をあげながら上機嫌に歩く息子と手をつなぎながら、35歳のオジサンが泣きながら歩いていました。

 

傍から見れば、異様な光景だったことでしょうw

 

でも良かった!本当に嬉しかった!

 

私とタクは、一緒に温泉に入れた!

 

タクは泣かなかった!

 

泣いてしまったのは、私のほうでした!w

 

いい湯だったなあ!!!